パドヴァのとっておき。

北イタリア・ヴェネト州パドヴァより、料理や季節のおいしい情報を中心に、日々のできごとを綴ります。



ドミニオ・ディ・バニョーリDominio di Bagnogli :: 2010/11/30(Tue)

パドヴァ市街から南下30㎞程の場所にバニョーリ・ディ・ソープラBangoli di Sopraという町がある。

パダーナ平原の広がる肥沃な土地。同地にて良質の地元ワインを造るカンティーナを持ち、農産、酪農などを広く手掛けるのが、ドミニオ・ディ・バニョーリだ。

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同地の中心に広く壁に囲まれている敷地は600ヘクタール。その中で米やトウモロコシなどの穀物、牛、ヤギ、ヒツジ、ロバ、鶏類などの畜産、そしてもちろんワインの製造もおこなわれている。

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経営は1917年より、ボルロッティ家による。現在残る主要な建造物は1656年からのもの。当時の所有者はコンティ・ウイッドマン家。敷地内は美しいヴィッラ、モニュメント、劇場、教会、カンティーナ、穀倉庫等々が建てられ、当時のヴェネツィア貴族の豊かさがうかがえる。
現在も、これらの建物は使用されているが、レストラン、アグリトゥーリズモ、催事場などとなり、改修されて利用されている。もちろん外観は当時のまま。敷地内にはミニ飛行場もあり、自家用機での訪問も可だとか。

ヴェネツィア生まれの劇作家、特に喜劇作家として知られるカルロ・ゴルドーニもここの劇場を使用したとされ、彼の作品の登場人物を模した彫像も庭園に。

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そして、ドミニオ・ディ・バニョーリという名で造られるワイン。同地の特徴は言うまでもなく、ここパドヴァ近郊でのみ生産されるフリウラーロFriularoという小粒のブドウの品種から造られるワイン。

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収穫が大変遅く、11月11日のサン・マルティーノが過ぎてからの収穫される唯一の品種。ワインの収穫の時期となるとその恵みを喜ぶ祭りとして、各カンティーナで開催されるヴェンデミニアVendeminiaも、同カンティーナはイタリア国内で常に最も遅い時期となるのだという。今年もこの祭りはフェスタ・デル・ヴィン・フリウラーロFesta del Vin Friularoとして11月第3日曜日の21日に行われたそうだが、大雨のなか、1,500人もの人が集まり、盛大に執り行われたのだという。

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ワイン畑には、パドヴァ大学の持ち株のブドウも30種ほどが研究及び保存目的で植栽されている。

さて、ワインの品種はというと、フリウラーロ100%をはじめ、各地で広く作られる、ソーヴィニオン、シャルドネイ、カヴェルネ、メルロー等々もあり、それぞれの配合の違いから全14種。ただし、同カンティーナの特徴は、それぞれ全てに土地色を出すフリウラーノ種が少なくとも10%は入っていること。これが個性、カラーを出している。何にでも入れちゃう的な発想は、いかにもイタリアらしく、またイタリアワインを体系化しずらくしている原因でもある、との指摘もあるようだが。(←同行していたソムリエさん談)

でも、カンティーナの一部、貯蔵樽置き場の一角をくりぬいて設えた試飲コーナーでいただいた2001年もののフリウラーノは甘く濃く、非常にバランスのよい格調高き美味しいワインだった。

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この日は前夜の突然の訪問の申し出を心よく引き受けてくれた(通常はムリらしい)のは案内役の同社マリカさん。私たちの一行に加わった若き日本人料理人のMくんの素直な興味からの一言「シャンパーニュ仕立てをぜひ飲んでみたい。」との申し出に、一瞬ピクリと顔色が変わりつつ、断りの言葉を探しながらも最後には栓を開けてくれた。(その翌日に、こういう訪問は定型ではないのよ、と遠まわしながら丁寧な挨拶のメールあり。)

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敷地内には、パドヴァの誇る美しいトサカが目印のガッリーナ・パドヴァーナも飼育されている。セサミ・ストリートみたいな足まで美しい毛に覆われた君は、豪快な体と顔つきのわりには。カメラを向けると近づいてくるお茶目さん。
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春先は、ここは美しいバラの花が咲き乱れ、さらに美しい風景となるらしい。

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Dominio di Bagnoli
Piazza Marconi 63, Bagnoli di Sopra, Padova
Tel; 049.5380008

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  1. produttore/生産者
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ブラーノ島のレース :: 2010/11/29(Mon)

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ヴェネツィアのブラーノ島の産業といえば、漁業とミルレッティ(レース編み)。

16世紀のヴェネツィア、レース技術が非常に進歩し、ヨーロッパはもちろん世界でもトップレベルの産業となる。刺繍師が活躍し、保護され、新技術が生まれる。ヴェネツィアならではの産業として商人たちにより世界各地へ輸出された。
ヴェネツィアの産業のひとつでもある印刷・出版業の発達にも伴い、世界初のレースカタログの出版も続々とされ、各地で流行ともなる。
当時のヨーロッパの貴族の贅沢なお洒落素材として、引く手数多だったのだろう。

そして、17世紀半ばにつくられたのが、現在も残るブラーノ独特のレース編みの技巧であるプント・イン・アリア。訳すとするなら、空中ステッチ。
それまでの布にする刺繍とは違い、一点を中心に高さのある刺繍、下地のないレース編み…というか、平面刺繍ではない、高低をつけた刺繍技術。

建ち並ぶ家々の壁の色がとても美しいことで有名な同島には、このミルレッティを扱う店がたくさんある。

レースを扱う店の一店、店の中でこのレース編みを続けるおばあちゃんパウラさん。レースを編み始めて60年以上のベテラン。まるで手品みたいに動く彼女の手先、空を切るようにして動く針と細い糸によって、美しい模様が露わとなる。 

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このおばあちゃん、とっても肌のツヤツヤした笑顔の絶えない素敵なおばあちゃん。毎日をレースを編んで過ごしているらしい。
が、こういった技術を持つ人はどんどん減少し、貴重な技術を受け継ぐ後継者がいないという深刻な問題も抱えている。

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こういう貴重なアルティジャナーレのつくりだすレース製品は、島じゅういくつかある店に入っても、すぐにお目にかかることはない。本物のブラーノは、たいてい大切にしまってあって、店内に飾られているのは、手製のものでも伝統的なブラーノのものではない場合が多い。
しかし、それに興味がある客だと解ると、途端に次から次へ…。店員も客を見てとっておきを披露したりする。けっこうにくたらしいのだが、昔はね~、私のマンマはね~、と話始めたりもして、けっこういい話を聞くこともできる。

でも、それもそのはず。値段が一桁違うのだから。見て・触るとその価値は歴然。刺繍の美しさが違う。精巧で繊細。そして丈夫。

このおばあちゃんのいる店の奥には売り物にもできないほどの貴重なレースが保存してあり、博物館状態。島にはレース博物館もあるのだが、ここ数年閉まりっぱなし。改修しているとかなんだとかだが、次にいつ再開するのかは誰も知らないらしい。
ブラーノのこういうおばあちゃん達。無形文化財に指定したいくらい。

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…で、ブラーノといえば、GOです。と言いたくなる、小さな白身魚、“ゴーGò”のリゾット。ヴェネツィアでも、特に同島色の強い料理。ブラーノに行ったら必ずや、これを食べるべし。

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  1. Venezia/ヴェネツィア
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ガストロノミア アル・ポルテゴAl Portego :: 2010/11/28(Sun)

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持ち帰り総菜を売る、ガストロノミアという業態がある。町角にも何軒かあり、外から眺めていると、季節の野菜や肉料理、魚料理など、美味しそうな大皿がたくさん並んでいて目の保養にも。こういう美味しそうなものは、それだけで街の景色や印象が良くもなるののだ。

ここはパドヴァのチェントロにあるガストロノミア。16年間この場所にて同店を守るのは、オーナーのロベルトさん。

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料理はヴェネトの定番料理、季節の野菜料理、肉のローストや煮込み、ラザニアなどなど、日替わりで様々なメニューが並ぶ。

この店の嬉しいところは、総菜の美味しさはもちろんながら、それらをそこでチョイスし、店内で食べられること。
店の片隅にあるテーブルに座ると温めたものを運んできてくれる。
売っている総菜とはいえ、家で普通に料理したような皿が並んでいるので、安心して食べられるし、自分で量をしっかり調整できるのはなかなか良い。

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軽くお昼を、なんていうときにこれはとっても重宝する店。

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La Gastronomica『Al Portego』
Via Dante 9, Padova
Tel;049.8758673


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  1. ristorate/飲食店
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衝撃?!のサルデ・イン・サオル :: 2010/11/27(Sat)

パドヴァのチェントロにある人気オステリアのシェフ、マヌエルにヴェネト料理講習会を開いてもらった。
ヴェネト料理を~、という希望に応えて彼が用意したメニューは、イワシとタマネギをマリネする“サルデ・イン・サオル”、手打ちパスタをアンチョビとタマネギのサルサで合わせた“マルタリアーティ・イン・サルサ”、真っ黒いイカのスミ煮“ネロ・ディ・セピア”。

このシェフ、見ての通りのこの体型。この店の皿の“盛り”の多いことは有名で、ほとんどの客は2皿どころか、小食の女性などは1皿さえも食べ切ることができない。彼もそれを承知のくせに、そのサービス大判振る舞いの盛りを辞めることはない。

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…ということと通じるのかどうのか、ちょっと違う意味ではあるけれど、彼の披露してくれた料理は魚料理とはいえずっしり。そのなかでも特に印象的な調理をしたのが、この日のアンティパストであり、ヴェネト料理といえばはずすことのできない魚料理のサルデ・イン・サオル。

今まで何度も見てきたこの料理の工程は、イワシの頭と内臓をとり、粉をつけ油で揚げる。たっぷりのタマネギをしっかりと炒め、ワインビネガーを加え(砂糖や白ワインなども人によっては)、揚げたイワシと重ねる、というもの。

この日も同様に始まった調理ステップ。イワシは通常通りに掃除して粉をつけて油へ。そしてその油を使ってのタマネギを揚げた。
…そしてそして、その油にそのままビネガーやら砂糖、塩などが続々と投入されていく…。

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非常に大胆な方法だけれど、その昔は材料などを無駄にしない、という観点から考えると、もしかしたらそうしていたのかも?!…まさか、まさかー!と思いながら、揚げ油までもを使いこなす彼の調理を見守っていると、そうなのかもとも思えてもくる。

とはいうものの、できあがりの味はピタリと決まり、ヘルシー嗜好に走りがちな最近のイタリア料理に対抗すべく、落ち付く美味さ。皿に盛りつけると、タマネギたっぷりのサルデ・イン・サオル、健康的にさえ見える。しかしながら、味も見た目もうまくまとまっている。

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この日はできあがってからをそのまま食すが、これは数日おいてからのほうが味が馴染んで食べ頃となる。
まさしく新鮮な魚を保存目的でできあがった料理の典型。その昔は海への長い航海への食料としても大変に重宝したものだ、ということもうなずける。

と遠い昔の物語に思いを馳せる間もなく、後に続くこれまた土地の郷土料理たち。腹がいっぱいだから少しにしてね、、、なんて言葉も聞いて聞かぬふり。

それにしても料理を愛する彼の話はとても魅力的で、大胆ながらに繊細な面も持ち合わせる料理と大きな体全体から人柄の良さがにじみ出る、個人的にはこういう料理人さんは好きなタイプだ。

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最後は、素敵な皆さんの笑顔で終了。
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料理の途中や後には、シェフとっておきのパネットーネやら4年熟成のアジアゴやら、自家製パンチェッタやらも振舞われ、この後、いくら時間が経ってもいっこうに腹がすかず、楽しみにしていたその夜の予定であった居酒屋巡りも、なんだか盛り上がらないままに夜が更けていった。。。

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  1. corso di cucina/料理教室
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美しい紙デザイン『カルテCarte』@Venezia :: 2010/11/21(Sun)

“カルテCarte=紙”という店名及びブランド名は、作品であり商品をそのまま表している。紙をベースにした絵からバッグや小物までを扱うヴェネツィアの小さな工房兼ショップ。

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デザイナーはヴェネツィア女性、ロザンナ・コッロRosanna Corrò氏。1歳半の女の子のママさんでもある。
本の修復を学んだ経歴を持つ。それを専門とする学校を2校経験し、紙に魅せられ、その後ヴェネツィアの紙工房に
て働いたのち、2007年に自らのブランドを立ち上げ、この地に店を構えた。

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特殊な紙を使った作品の紙の原紙はカルタ・マルモリザータCarta Marmorizzata、つまり、マーブル模様の紙。
それが独特の色や模様を織りだしていて(正しくは染めだして??)、それらからできあがる作品はオリジナルなもの。
そして、カルタ・セータcarta setaという絹紙と訳すのかは疑問だが、薄い繊細な紙。

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できあがる作品及び原紙を見ていると、なんなくムラーノのガラスの色合いをも髣髴させるが、スピリットはそこにあるのかも、と感じさせる。

大がかりな絵から小さな額縁、バッグ、ネックレス、ピアス、ブローチ、小物入れ、ノートなどなど、大きなものから小さなものまで様々に揃う。
女性らしい細やかなデザイン。センスの良さがキラリ。 “紙のアート=アルテ・イン・カルタArte in Carta”はショップ・彼女のデザインのコンセプト。

アクセサリーに関しても、一見ガラス製品か?と思わせる色合い。ムラーノのガラスのそれらにちょっと似ているが、大ぶりなものでも紙だからこその軽さがいい。ガラスのアクセサリーはとっても可愛いのだけれど、大ぶりなものとなると身につけていて肩が凝るのがいつも気にかかっていたから。

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店内に置かれている商品すべてが、まるでそれらもアートの一部みたいに壁やら照明に溶け込んでいる。
もちろん店内の造り、壁や天井、そして梁などもそこにあったものを利用しているもの。モダンとアンティークが小さくうまくまとまっている小さな空間。

ヴェネツィアらしい雰囲気のあるセンスの良い店。そこに優しい彼女の人柄が小さな店内に充満している。

『Carte』
San Polo 1731, Venezia

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