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パドヴァのとっておき。

北イタリア・ヴェネト州パドヴァより、料理や季節のおいしい情報を中心に、日々のできごとを綴ります。



サルーテ教会のお祭りに欠かせない「カストラディーナ(castradina)」 :: 2019/11/22(Fri)

11月21日は、「聖母マリア奉献の日」。17世紀のヴェネツィアで、この時代にヴェネツィアを急襲したペストによる災厄から逃れるための祈りを込めて建築された教会は、ヴェネツィア共和国の守護者マリアへ奉献された。現在もヴェネツィアの人々に特別な思いを寄せられ、また外観の美しさもヴェネツィアを代表する教会の一つ、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会がそれに当たる。

この時代より、ヴェネツィア政府により、11月21日の聖母マリアの祝日を同教会への訪問を公式行事と定められ、現在もこの日はヴェネツィアの主要な行事の一つとなっており、サルーテのお祭り(Festa della Madonna della Salute)として、学校、市庁舎関連はお休みとなり、この日にだけ特別にサン・マルコ湾にサルーテ教会に続く橋がかけられる。その橋を渡って市民は教会へお参りに訪れる。

で、この日に、この日だけに食される料理がある。それが、カストラディーナだ。
材料の主役となるものは、去勢した羊肉。去勢した(=カストラート)した肉を使うので、この料理名がある。
この肉は、年中手に入るものではなく、このサルーテのお祭りの時期にだけ肉屋の店先に並ぶ。いくらヴェネト州内全域がヴェネツィア共和国であった、とはいえ、これはヴェネツィア本島に行かないと手に入らない代物。
材料となる肉は、生肉ではなくて、香草やスパイスに覆われて燻製されたものが使われる。非常に特殊な材料だ。

聞くところによると、これはもともとヴェネツィアにあった食材ではない。ペストが大流行した頃のヴェネツィアは、その影響で人口が1/3にも減少したとも言われ、食べるものも非常に枯渇していた貧しい時代。とはいえ、サルーテの祝日に何かご馳走を、ということで使われたのが、この肉なのだが、その起源は、イストリア半島だという。現在のクロアチアなどのあるアドリア海の対岸側の地域は、17世紀にはヴェネツィアの領地であったことから、食材が持ち込まれたらしい。現在入手できるこの燻製肉も、あちらから運ばれてくるのか、もしくはヴェネツィア周辺で加工されているのか、はわからないのだが。

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肉は、燻製されたかたーいものなので、調理にかかる前に3日3晩水(ぬるま湯)に着けて戻す。結構と強烈な匂いを発する。戻し終えた後は、鍋に再度水を入れ、玉ねぎ、セロリ、人参、ローリエやタイム、ジネープロを入れてゆっくりと茹でる。合計で2.5時間くらいをかけて煮る。

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こうすることで、羊肉本来の臭み、燻製による強い香りをゆっくりと外へ追いやる。
茹で上がった肉は、その時点ですでにホロホロと柔らかい。とはいえ、筋のある、食感が独特でもちろん風味も個性的な味わい。粗熱をとってからそれを取り出し、細かくさく。

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そして、この料理に欠かせない、ヴェルザは別鍋で準備。

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鍋に玉ねぎとニンニクの細かく刻んだものをいため、そこに一口大に切ったヴェルザを加えて炒める。ブロードを入れ、柔らかくなるまで煮込んだところで、羊肉を加えてしばらく煮込む。塩、胡椒などで味を整えて出来上がり。

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大抵、サルーテのお祭りの日は、寒い日、と決まっている。この温かいスープ仕立ての料理にて、腹の底から温まるような感じ。
健康で過ごしていけることに感謝しつつ。



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ビーゴリと鴨の煮込みソース Bigoli all’Anatra :: 2019/08/10(Sat)

ヴェネトの地元料理として、太いスパゲティ状のパスタ、ビーゴリがあげられる。粉と卵を合わせて捏ねた生地を、トルキオという機械をつかって押し出してつくるパスタだ。家庭ではトルキオを使って自家製ビーゴリをつくることはほとんど見かけなくなってはいるが、生パスタ専門店や街場のスーパーなどでは、簡単に入手することができる。

このパスタには、代表的な2種のメニューがある。ひとつは、ビーゴリ・イン・サルサといい、じっくりと炒めた玉ねぎにアンチョビを溶かし込んだものをソースとする。見た目は色味も渋くてシンプルだが、食べると滋味深くて美味い。

もうひとつは、アーナトラ)の煮込みソースで、ビーゴリ・アッラーナトラという。いわゆる肉のラグーなのだが、よく知られるラグーはトマトをたっぷり入れて赤く仕上がっているもの。こちらはトマトは少しだけ旨味に使い、全体的に白いラグーに仕上げる。いわゆる、ラグー・ビアンコ。

玉ねぎ、人参、セロリのみじん切りをじっくりと炒める。そこにのミンチした肉を入れて肉の表面をしっかりと焼き付ける。

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鍋の中には肉から出てくる水分がかなりあるが、それがなくなるまでしっかりと焼き付けることで肉の臭みをとる。途中、ローズマリーやタイムを加えながら。

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水分がなくなった頃に、白ワインを加えてアルコールをとばすようにさらに火を入れたら、トマトペースト、そして様々なスパイスを投入。これがこのラグーのポイントだ。

使うスパイスはシナモン、クローブ、ナツメグ、コショウ、ジネーブロなど。スパイシーに仕上げるのが目的ではなくて、これももともとは肉の臭みを緩和するために使ったのだろう。途中、様子をみてブロードなどを加えながらしばらく煮込んでできあがり。

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モチモチ感のある太いビーゴリによく絡ませて、しっかり噛みしめながらいただくパスタ。アルデンテ、という食感とはまた違うパスタだけに、このラグーがとてもよく合う。

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パドヴァの希少な土着品種ブロッコリー :: 2019/01/13(Sun)

野菜ってほんとに面白い。北イタリアに住んでいるから、寒い冬にはより寒い土地ならではのものが面白いのかもしれない。

最近知り合った生産者に、パドヴァ土着品種ブロッコリーがあることを知り、農家を訪ねてみた。

生産地域はパドヴァ南部。ヴェネトには、いくつかの土地固有のブロッコリーが残っているが、これもそのひとつ。

「Cavolo Broccolo Padovano (カーヴォロ ブロッコリ パドヴァーノ)」=パドヴァ産ブロッコリ

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ブロッコリーは、キャベツと同じ仲間のアブラナ科だが、この品種は言うなれば、一般によく知られるブロッコリとキャベツの合いの子のような形をしている。要は、開いた葉を持つのが特徴。色も、寒い冬野菜特性の、非常に濃い緑色。だが、株の芯のほうにいくと柔らかく甘みが増す。

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生食にはあまりむかないが、しっかりと火を通していただくのが良い。

低い気温にも耐性のあるもので、霜が降りくらいの氷点下にも耐える。だから、収穫期も遅く、11月の後半から。

それなりに長くパドヴァに住んでいながら、この種のブロッコリーがあるのを今日まで知らずにいたが、市場への出回りは非常に少ない、超希少な野菜
その昔は、出荷の際には、バッサーノのアスパラのように、細い柳の若い枝でこの野菜をしばって出荷していたのだとか。

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同品種を保護し、普及に努める生産者団体が存在し、この種のブロッコリーの生産農家では、交配による種絶滅を防ぐため、各農家にて収穫・出荷のシーズンを終えても、取種用の株を残しておき、開花させて種を保存しているのだそう。畑へは種まきではなくて苗植えをしているので、地元内の苗屋に種を持ち込み、苗まで成長させたものを畑に植苗する。

この日訪れた生産者は、オーガニックの認証を受けており、パドヴァ卸市場にもオーガニック専門業者として、約50生産者とともに協同組合を立ち上げている。

畑では、南部パドヴァ特有のラディッキオもあり、現在、畑にまだ残るものと、軟白工程中のものがあった。

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この地域の軟白工程は、水に浸すのではなく、とにかく日差しから避けて、適度な湿度を与えること。黒いブニールシートの内部には、温度を保つたけに干しワラがかませてある。
この土地に150年以上の歴史を持つ農家の家系という、彼らの話いわく、昔は牛舎の片隅に畑での収穫後のラディッキオが積んであったのが日常だったのだという。牛舎は動物がいるおかげで、真冬でも適度な温度と湿度が自然と保たれていた環境だったから。

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聞いても聞いてもお宝みたいなおもしろ話がとびだし、聞けば聞くほど面白い。土地ならではの歴史背景が垣間見られるのが、土地固有の生産物なのだと思う。



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フリウリで一番美味しい‼︎FRICO (フリーコ) :: 2018/07/30(Mon)

フリウラーニ(フリウリ人)のまさしくソウルフード。フリウリ料理、といったらまず一番に思い出す料理で、レストランに行けば大抵の店にはメニューとして置かれている。各家庭でも飽きずに比較的頻繁に食べられるもの。そして、皆が大好きなメニュー。

これも各家庭、各マンマごとにそれぞれのレシピがあり、その出来上がりも千差万別なのだ。

私もフリウリへよく足を伸ばすようになってから、様々な場面でフリーコを食べてきたのだが、一番美味しい!と太鼓判を押せるのは、知り合いのマンマ、アミンダさんのそれ。

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フリーコの主な材料は、土地のフォルマッジョ、そしてジャガイモ。そこに玉ねぎを少し加える人もいる。プロシュットを加えて旨みを足す場合もあるそうだが、アミンダさんのはジャガイモとフォルマッジョのみ。超シンプル素材。

とはいえ、フォルマッジョを熟成違いで3種使うのが、彼女のフリーコの美味しさの要因。モンタージオという地元のものを、2ヶ月熟成の若いもの、5-8ヶ月、そして13ヶ月以降のストラヴェッキオと呼ばれるものを用意する。最初の2つは角切りに、熟成のより進んだものはおろしたものを準備。

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そして、ジャガイモは細切りにすり下ろす。それをオリーブオイルを少し加えたフライパンでじっくりと火を入れる。30分以上をかけてじっくり炒めていると、表面がいい感じに焦んがりと…

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ジャガイモはこうして生から使うが、あらかじめ茹でてつぶしたものを使う場合もある。レストランなどはこの方法をとらないと、調理時間がかなり時間を要してしまうのだが、生から調理を始めたジャガイモでつくると、ジャガイモの食感が残り、やはりこれでなくては!と思わせる仕上がりとなる。

さて、ジャガイモにしっかりと火がが入ったところで、用意しておいたフォルマッジョを加える。

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この料理、フリウリを代表する「クチーナ・ポーヴェラ(貧しい料理)」として知られているが、これだけしっかりとフォルマッジョが入ると、ポーヴェラとは言い切れない、なんともリッチな感じだが…

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できあがりは、やはり素朴でシンプル。

フライパンでじっくりと表面を焼き上げて、焦んがりとクロッカンテ。中はジャガイモの食感がしっかりとして非常にうまい。

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彼女自身も自慢のフリーコなのだが、外食の際にメニューにフリーコを見ると思わず注文してしまうのだとか。そして、いかに自分のものが美味しいか、を確かめる…。

でも、私も同調フリウリ一美味しいフリーコは、絶対ここだ!と断言したい、アミンダさんの一皿。





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バッサーノ産白アスパラDOP (Asparago Bianco di Bassano D.O.P.) :: 2018/04/25(Wed)

ヴェネトの春、農産物のなかでは最も格高く存在するのは、バッサーノ産白アスパラ。

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2007年より、野菜のなかでは数少ないD.O.P.の産地呼称を与えられている。そのブランド付きになるべきの条件とは、
・白い鮮やかな美しい色
・長さ18-22cm、直径11mm(最低)
・まっすぐとのびた美しいフォルム
・穂先がキュッとしまっている
・柔らかく、筋っぽくない
・見た目及び香りなどが新鮮であること
・1束は1-1.5kg
・束は全て同じスタイルで柳の若枝で結ばれていること
というものが主な条件

生産者は毎朝、日が昇る時間から収穫を始め、掃除して束をつくり、各地、各自の所属する協同組合にそれらを持ち込む。

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重さや見た目、品質のチェックを受け、それに合格してはじめて緑色の「バッサーノ産DOP」の名札をつけてもらえる。

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もちろん2級品も出てくるので、それらには、協同組合オリジナルのマークがつけられ、値段も少し下げて売られる。

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DOPとして認められるのは、6月13日まで。この日はパドヴァの守護聖人であるサンタントニオの日。なぜこの日までなのか、というと、バッサーノの白アスパラの価値を見出して広めたのは、同聖人であったのと、季節的にこのあたりの日程がうまい具合に収穫最終時期に重なったことから。

ただし、近年では、5月の後半には、ほとんどの収穫は終了してしまっている。気候がだいぶ変化している理由から。
今年の春先はおまけに、低温と長雨続きで収穫のスタートがだいぶ遅れたが、ここ数日急に気温があがったこともあり、現在、旬真っ盛りだ。

この日、協同組合にアスパラを購入に訪れた時間は、ちょうど次から次へと生産者が自分たちの生産物を持ち込む時間帯。コントロールを受けるのに、順番待ちの状態だった。

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持ち帰ったアスパラは、白いベシャメルたっぷりのパスティッチョ、茎の下部分と皮をブロードにして仕上げたリゾット、そして茹でてゆで卵と合わせて…とアスパラ三昧の夕食にて、満足。

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